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花組「アルカンシェル」ネタバレなし感想

先日観劇した花組大劇場公演「アルカンシェル」

なるべくネタバレしないように感想を書いていきます。

ただし1回のみの観劇なので、記憶違いや解釈違いの部分があればご容赦ください。

目次

あまり良くなかった前評判に少しの不安

実はこの公演を観たのが、今から1週間程前。

つまり既に公演日程の後半に差し掛かっており、ある程度観劇を終えた方達からの感想がチラホラ流れてくる状態だったんですね。

ネタバレが苦手なタイプなので、なるべく感想は見ないようにしていたのですが、

「やはりイケコのオリジナルは…」とか「ストーリーが薄い」「セットがしょぼい」など、

なかなかネガティブな意見が聞こえてきてしまっていて、あまり好意的な感想を聞きませんでした。

トップの退団公演って、言い方悪いけど、だいたい駄作の方が多いので、そんなもんだろうとも思いつつ、カレー(柚香光)の最後の作品が、そんなにネガティブが詰まった作品は嫌だなぁとも思っていました。

結論から言うと、これらのネガティブな感想は何だったんだ?と私は思いました。

確かに「?」な所もあると思いますが、(何を見せられているんだろう)と虚無になるような作品ではなかったと思うので、全体的には良かったです。

トップ退団公演にふさわしい当て書き作品

作品の舞台は、ナチスドイツ占領下にあるパリの劇場。

公演や表現の自由を奪われながらも、お客様に最高の舞台を届ける為に、一致団結しようとする姿は、コロナ禍真っ只中にトップスターに就任した柚香光率いる花組に重なる部分がありました。

カレー演じるマルセルは、劇場、そして国を守る為に、初めは戸惑いながらも信念を持ち、天才ダンサーとしての努力も惜しまず、周りからも慕われる若きリーダーに成長していきます。

まさに花組トップスター柚香光そのものに当て書きされたキャラクターでした。

そして、ダンスが得意なカレーの退団公演が、「ショー付ではなく一本物」と発表された時、かなりガッカリした声が多かったですが、この作品はショーシーンが盛りだくさん。

オープニングから黒燕尾にシルクハット、ケーンを持ったクラシックな姿から、熱いラテンショーまで様々なショーナンバーを観る事ができました。

様々な衣装も豪華で楽しいです。

同時に退団するトップ娘役のまどかちゃん(星風まどか)も、劇場の看板歌手として、豪華な衣装(特にポスターでも着ているドレスが本当に素敵)と歌声で魅力あふれるカトリーヌは、本人の持ち味を活かしたキャラクターだと思いました。

特にとてもオペラが上手で、宙組時代「シトラスの風」でも、彼女のオペラが凄く上手かったなぁと感動した事を思い出しました。

一本物として見るよりも、豪華なショーを観ているような気持ちでこの公演を観る方が楽しめるような気がします。

過去出演作品を思わせるようなオマージュ

退団公演にふさわしく、カレーの過去出演作品を彷彿とさせる台詞や演出もありました。

「モンマルトルのピエロ」で最後に荒れるピエロの開襟でネクタイが乱れた姿は、「うたかたの恋」での新場面、皇太子が精神錯乱してピストル撃つシーンの衣装を思い出したり、「古代ローマ人」という台詞に「アウグストゥス」を思い出したり。

実際に生でピアノを弾く姿は「巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~

パリ、マンホール、地下、フルフルのワードで二番手時代最後のショー「シャルム!」を思い出したり。

やや強引かもしれないけれど、衣装が「はいからさんが通る」の少尉カラーを思わせる組み合わせだったり、かすかーに「ポーの一族」のアラン?と思った衣装も。

勘違いだったり、まだ見つけていない箇所もあると思いますが、ファンそれぞれが、色々振り返られる場面を入れてくれる演出が粋だなと思いました。

観客がニコニコほっこりするアドリブもこれが最後

オリジナル作品の良い所は、毎公演毎に変わるちょっとしたアドリブが楽しみになる所。

れいまどコンビでは、「うたかたの恋」のかくれんぼのシーンのアドリブが、もう可愛いやらカッコいいやらで客席一同ニコニコしたのが記憶に新しいです。

毎公演のレポを楽しみにしていました。

今回も、マルセルの部屋でカトリーヌにコーヒーを淹れるシーン、

「砂糖はどれくらい入れる?」

このやり取りが毎日変わるようなのです。

私が見た回では「砂糖はどれくらい入れる?」「おまかせで」

コーヒーを持ってきた時にマルセルが「多めに入れといたよ」と帰ってくる、でした。

このさりげないフランクさがたまらん。囁きがフランクなのにイケメンすぎる。

これも毎回のレポを楽しみにしています。

あとはパーティの場面で、銀橋上で仲間のダニエル(希波らいと)が食事をマルセルに差し出す時のやり取りもアドリブ。

私が見た時は、ダニエル「お肉、好きでしょ?」マルセル「今日はいいや」でした。

毎公演ごとにダニエルは何かと食事を勧めてくるようです。

次期トップへ繋ぐ演出

これも退団公演ならでは。

次期花組トップスター永久輝せあと、同じく次期トップ娘役、星空美咲の二人の場面がありました。

ひとこ(永久輝)演じるドイツの軍人フリッツは、アルカンシェルの歌手アネット(星空)と恋に落ちます。

看板歌手のカトリーヌの代役を、アネットが務める場面がもうモロです。

フリッツのキャラクターはさておき(これに関してはめちゃくちゃツッコミどころがある)

こういった演出を加えられるのがオリジナル作品の良い所ですね。

他の退団者の餞別場面

この公演ではトップ以外にも4名の退団者がいます。

特に目立ったのは舞月なぎさ演じるジェラールですね。

最後の方に、今回の退団と新たなる旅立ちを思わせる台詞がありました。

客席からも拍手が起こり、手厚い餞別でした。

退団が惜しまれるホッティー(帆純まひろ)も、台詞がレジスタンスメンバーの中では多めで、ソロ歌もありました。

しかし愛蘭みこ、美里玲菜の2名の娘役には特に目立つ場面や台詞が与えられていなかったのがとても残念でした。なぜなのか。

セット、音楽、衣装

セット

前評判でセットがしょぼいという事を聞いていたのですが、実際観劇してみて、いや逆に普段どんなセット見てるの?と思うくらいに全然しょぼくなかったです。

装置スタッフはこれまで何度も宝塚の舞台を手掛けている、松井るみさん。

盆が回転すると違う場面が出てくる形のセットです。

劇場、ホテル、マルセルの部屋、など1回しか観ていないので、何から何に変わったのかまでは逐一覚えていないのですが、話の流れがスムーズだし、よく作りこまれているなと思いました。

幕前芝居も何度かありましたが、人数多めなので、時間稼ぎやぶつ切りも感じなかったです。

幕の裏から結構トンカン聞こえてくる比率は高めですが、これも生でお芝居を観ている感じがして私は好きです。

フィナーレに大きな虹の装置も2個降りてくるし、キラキラピカピカしたようなセットが豪華と感じるならば、確かにお芝居のシーンでセットはキラピカしていないので物足りないかもしれませんが、しょぼいは言い過ぎた表現かなと思います。

音楽

主題歌の「たゆたえども沈まず」

パリ市の紋章に書かれた標語、と劇中の台詞でもあったように、力強く、どこかフランスを感じるメロディで、元々の市歌を訳しているのかと思ったら宝塚完全オリジナル作品でした。

何度も作中に登場するので、完全に今でも思い出せます。

作品に1つはこのように頭に残る楽曲は必要ですね。

逆に1度しか観ていないので、他の曲は歌詞を見ても思い出せないのですが、それほど主題歌のメロディは強かったです。

衣装

衣装は、クレジットを見なければ有村淳さんかな?と思う程に、個人的には大好きなデザインや素材の衣装でした。

担当されたのは薄井香菜さんです。

2019年大劇場初登板の新しい先生です。

有村先生を思わせるような体に沿ったラインと素材、宝塚らしい上品さ、繊細な装飾やビジュー遣い。

かと思えば少し古めかしさを感じるスーツの素材や形。

これまでの宝塚の衣装の歴史を網羅したようなデザインの数々

カトリーヌのポスター衣装の、腕に巻き付くようなビジューのデザインはとても新しく感じました。

首元にフサフサがついた水色のドレスも素敵。

劇中の衣装は、男役も娘役も、ドレスも普段着も全部素敵でした。

しかしフィナーレになった途端に「衣装さん変わった?」と思う程に、なんかちょっと苦手な色使いや柄だったり形の物が多かったです(※個人の感想です)

思えば彼女が担当した月組ショーの「Dream Chaser」の衣装も個人的にはちょっと苦手だったので、お芝居とショーのテイストが違う先生なのかなと思いました。

個人的にはお芝居での登板が増えると嬉しいです。

ストーリーが薄い?

これも前評判では聞いていましたが、確かにストーリーの薄さは否めないなぁと思いました。

一幕目が終わる頃の「この後どうなるんだろう?!」のハラハラ感もそこまでありません。

二幕の最後の方は少しだけハラハラします。

ただ退屈さを感じたり虚無にはなりませんでした。

話の展開や登場人物は、ストーリーテラー(聖乃あすか)が解説してくれるので、凄く分かりやすいです。

プログラムも軽くあらすじだけ読む程度で良いかも。

むしろ場面ごとの説明を読むと結構なネタバレになるので、事前には読み込まなくて良いと思います。

終演後(あれって一体なんだったんだろう?)とモヤモヤする事もない。

エリザベートのような大作を期待していれば、それこそガッカリするかもしれませんが、そうでなければ普通に楽しめると思います。

ただし時代背景や登場人物達の事を細かく考えすぎると、矛盾していたりキャラが破綻していたりするので、そこは突き詰めない方がいいかもしれません。

ナチスドイツが出てくるけど、変にメッセージ性を強めたり、虐殺や暴動などを入れすぎると2時間半観るのは辛いし、退団公演なのに暗くなりすぎるだろうから、その辺は良い塩梅で希望を持てる作品に仕上がっていると思います。

とにかく寂しい

フィナーレでお互い見つめ合いながらデュエットダンスしている姿を見ると、本当に微笑ましいし、このコンビの退団で良かったなと思いました。

華ちゃんとのコンビも好きでしたが。

特にまどかちゃんの笑顔を見ると、本当に良かったねと心から思いました。

いやもう本当に寂しいにつきます。

カレーは新人公演の頃から観ていて、群衆に交じっていても凄く目立つし、抜擢も早く、そりゃスターになるだろうと納得の容姿とダンス力。そして恥ずかしげもなく放出してくれるキザさ。

人間的にもできていて、人柄を感じるエピソードや振舞い。

トップになってから貸切公演に2回当たりましたが、そのたびに感じる挨拶の上手さ、腰の低さ。

毎回銀橋でクルッと一回転して大羽根の裏側まで見せてくれるサービス精神の塊。

今回もクルッとしてくれたけど、これが最後かと思うと本当に寂しかったです。

まどかちゃんは音楽学校の頃から、なんて可愛い子なんだと思っていました。

宙組ではすぐにトップの子役時代を演じ、少年ルドルフを演じ、こちらも早い抜擢からのトップ娘役就任。

お互い早い抜擢で、音楽学校時代から注目されてきた同士のコンビでした。

マルセルとカトリーヌのように、二人とも元からあった才能を更に磨き上げ、切磋琢磨した同志。

この二人が次回からもういないのかと思うと、本当に不思議だし寂しいです。

久しぶりに大きな喪失感でいっぱい。

二人の退団公演が、この作品で良かったなと今は思います。

機会があれば、あと何回でも観たいです。

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最後までお読み頂きありがとうございました。

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