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雪組 朝美絢主演の集大成「海辺のストルーエンセ」

本日は作・演出 指田珠子

宝塚歌劇団雪組 朝美絢主演「海辺のストルーエンセ」の感想を書きたいと思います。

結論から言うとストーリーも分かりやすく、衣装、振付、音楽どれをとっても素晴らしかったです!

何より朝美さん率いる雪組メンバー1人1人の演技も歌もビジュアルも最高で、演出家、衣装、演者ともにこれからの活躍がますます楽しみ、そしてそれらを期待させるフレッシュな面々が揃って作り上げた至高の舞台だったと思います。

以下は結末含むネタバレあり、かつ現時点パンフレットが手元になく1回のみの生配信での観劇のため、記憶違い、解釈違いなどあるかと思いますがご了承ください。

あらすじ

舞台は18世紀。啓蒙思想に傾倒するドイツの若き医師ヨハン・ストルーエンセ(朝美絢)は保守的な医療現場を改革しようと奮闘中。

数年後、デンマークでは自堕落な生活を送る若き王クリスチャン7世(縣千)と、イギリスから嫁ぎ、王宮に馴染めず心を閉ざしてしまった王妃カロリーネ(彩音唯)。

冷え切った二人の周囲には、自分の幼い息子を次期王にと企むクリスチャン7世の義母で皇太后のユリアーネ(愛すみれ)とその一派や官僚達。

新しい考えを広め、いつか大きな世界で活躍したいと野心を抱いていたストルーエンセはデンマーク王宮にパイプを持つランツァウ伯爵(真那春人)とブラント(諏訪さき)協力のもと、その美貌と賢さ、エレガントな立ち振る舞いを武器に、専属医として王宮に潜り込む。

ストルーエンセの治療で真っ当に改善しつつあるクリスチャン7世と、次第に本来の自分を取り戻していく王妃カロリーネ。二人は国に立つ者としての自覚も生まれるが、ストルーエンセとカロリーネは惹かれ合い、また国政をも動かす力を持ったストルーエンセの野望は更に大きく暴走していく・・・。

史実がベースの物語ではありますが、どこかで観たような設定や演出が所々点在し、宝塚の作品あるあるも詰め込まれていて、この物語の世界観に入り込みやすかったです。

普段から宝塚を観ている人なら、観劇中いくつかの作品名や役名が思い浮かんだのではないでしょうか。

朝美絢の集大成ストルーエンセ

そして何と言っても朝美さんがこれまでに演じてきたり関わった役柄、影響を与えた人物や作品を彷彿とさせる要素が詰め込まれていて、朝美絢の集大成といってもいいんじゃないかというくらい、史実の人物なのに当て書きされたようなキャラクターでした。

fff

ドイツの若き医師は「fff」のゲルハルトで、しかし国も職業も同じながらやはりビジュアルや喋り方を全く変えていて当たり前の事かもしれないけど流石だなと思いました。町医者時代の短髪黒髪似合ってましたねー。朝美さんの下級生時代を思い出しました。

ルパン三世と望海風斗

そして町医者から一変、貴族からセクシーインチキ診療をしてお金をたんまりせしめて錬金術と呼ぶ行為は、朝美さんは出演していませんが雪組前トップスター望海風斗さんが演じた「ルパン三世」カリオストロ伯爵そのものでした。

望海さんが朝美さんへ与えた影響は計り知れず、歌や演技力の向上も望海さんがトップを務める雪組へ異動してからの伸びが凄まじかったです。

そしてストルーエンセの後半、床に這いつくばり、愛ゆえに狂って叫び死んでいく様は、まさに望海さんの伝家の宝刀を受け継いだな、とも思いました。笑

1789

町医者から貴族お抱えの錬金術医師になった時のビジュアルは新人公演で演じた「1789」アルトワ伯を彷彿とさせる色気とストレート黒髪長髪でした。

あんな医師にお色気診療されたら全員不整脈になるし心臓の弱い方は死ぬ。

アルトワ伯のイメージに引っ張られ、凄い悪役に変わってしまったのかと思ったのですが、デンマーク王室に入った後の治療は「断酒」「運動」「目標を定めさせる」など真っ当な治療を行っていました。キャラクターも意外と明るく軽快でした。真の闇落ち前。

ひかりふる路

若い頃からの意志は変わらず、初めは貴族よりも貧しい民を救いたい一心で改革を行いますが、恋で周りが見えなくなり同時にどんどん膨らんでいく野望。独裁政治気味になった姿はまさに望海さんのロベスピエールが降臨していました。

そしてしまいには完全に周りが見えなくなり、自分が正しい事をしているかのように歌っているあの顔つきは過去に朝美さんが演じたサン=ジュストそのものでした。目にアカン光が宿っていた。久しぶりに見たあの表情。どうもお久しぶりです。

衣装

そして衣装なんですけど、欲が出てくるごとに衣装に金箔が増えていくんですよね。各キャラクターの衣装の金箔で欲が描かれていた。

これは「ひかりふる路」で後にギロチンにかけられるキャラクターの衣装に黒い斜め線が入っていた有村淳先生の衣装を彷彿とさせました。

この流れで衣装について触れたいんですけど、今回の衣装担当は加藤真美先生。最近名前をよく見るようになりました。前回の大劇場公演花組「ENCHANTMENT」での爽やかな衣装も記憶に新しい所です。

加藤先生は2009年入団。95期生の朝美さんと同時期の入団です。

私はかねてから有村先生の衣装が大好きだけど、それに加え最近は加藤先生の衣装も大好きになりました。どちらかが衣装担当だと分かるとその公演に安心感しかない。

加藤先生のデザインは有村先生の系譜を継いでいると思います。共通して演者のスタイルがとても良く見えるのです。元々スタイル抜群のジェンヌ達ですが男役、娘役ともに更にスタイルが引き立つライン。そして生地選び、色味選びのセンスが天才。

加藤先生は特に「ファントム」クリスティーヌのタイターニアの衣装が繊細で美しすぎて忘れられません。

宝塚の殿堂にて撮影

二人とも華やかだけどゴテゴテせずいかにも「宝塚」という上品さ溢れるデザインが多いように思います。たまに「え?!」ってびっくりするようなデザインが出てくるのも似ている。笑

話戻り今回のストルーエンセの衣装もどれも世界観にも役柄にも合っていて良いものばかりでした。衣装って本当に大事だと思います。

ストルーエンセは1幕では青の衣装、2幕の独裁化している時は金箔が増え赤い衣装に、そして最後は元の青い衣装に戻る。

カロリーネも同じく紺のサテンのシンプルなデザインのドレスから、ピンクのドレスに盛り髪スタイル。分かりやすすぎるくらいの舞い上がり方。そしてやはり元の紺の衣装に戻り、最後はマリーアントワネットの最期の場面でお馴染みみたいな白い衣装を着ています。

一貫してクリスチャン7世の衣装はイメージカラーが黄色のままだったたのがより可哀相でした。水色のベスト、黄色生地にお花の入ったデザインはなんとなくロックオペラモーツアルト(有村淳先生)の衣装を思い出しました。

音楽と振付も全体的にフレンチミュージカルを彷彿とさせるものが多くロックテイストで、画面やストーリーが暗くなりがちな世界で活気があって非常に良かったです。

出演者の感想

ヨハン・ストルーエンセ(朝美絢)

先ほどの項目でも触れましたが今までの朝美さんの集大成のような役でした

前回の大劇場公演辺りから更に顔周りがシュッと痩せたなと思っていましたが、それによって今までに感じなかった男臭さというかキラキラ抜きの大人の色気が出たというか、これまでのイメージから更に男に近づいた感があるなと思いました。

ビジュアルの良さはもちろん(2時間半ずっと美)、歌も安定していて台詞も聞き取りやすかったです。志ある青年、貴族をあざむく錬金術医師、宮廷に潜り込んだコミュ力ありありな医師、暴走した独裁政治モード。これだけの変化を器用に演じ分けていました。

カロリーネとの不倫時、初期の周りにバレないかの初々しい表情から最後はクリスチャンを舐めてるような態度になるまでの細かさも良かったです。

メイク、カツラどちらも役にも本人にも合った物を選んでいるなと思いました。センスが抜群すぎる。

そして仕草もカッコいいのオンパレード。しかもそれを自然にやってのけている。昔はウィンクだとかそういうのもちょっと恥ずかしさがあるのかな?と思った事もあったけどもう自然に観客を殺していますね。

ちょっとした段差に足をかけたり、特にあのキスする前に眼鏡を外す仕草は何ですか?観客一同心停止した瞬間。終演後の挨拶も眼鏡をかけて「公演DVD買ってください」って絶対分かってやってる!さすが錬金術医師。

「顔が良い」をとっくに超越した存在になったのは、持ち前のビジュアルだけに胡坐をかかず、努力を重ね続けた賜物なんだと朝美さんを見るたびに思います。

二番手羽根を背負い、これまでトップの彩風さんと友情や信頼関係で結ばれている役が多いので、今後物凄く黒い悪役も観たいです。

朝美さんって意外にまだ物凄い悪役ってあまりないですよね。

カロリーネ(音彩唯)

はばまいちゃん、素晴らしかったです!まず声が可愛いし澄んでいて聴き取りやすい。

お芝居も良くて、心を閉ざして内気に振舞う様子から次第に本来の自分を取り戻した後が別人のように生き生きとしていて、大人な演技と活発な演技どちらも魅力的でした。と同時にどちらのお芝居もできるので色んな役ができるだろうなと思いました。

歌もめっちゃ上手いですよね。上手いだけじゃなく感情を乗せながら歌う事もできていていました。(特にストルーエンセから本当は君も僕の事好きなんじゃない?って掛け合う時の歌。声の震えで動揺とか細かい所がよく表現されていました)

ダンスもキレキレで堂々と踊れていたし、ドレスからチラ見えする美脚!

膝折もすごく自然にできていました。さすが105期主席入団、音楽学校の文化祭で既に話題沸騰だっただけあります。

もういつでも準備万端って感じがします。

そして意外に朝美さんとの並びも凄く合っていて、この二人の並びもっと見たいなと強く思いました。

課題があるとしたらメイクとカツラをもっと自分に合うものを見つけられるといいかなと思いました。ただこれは本当に微々たる事で、周囲からアドバイスをもらえば全然すぐ研究や改善ができる物だと思うので問題ないと思います。

クリスチャン7世(縣千)

あがちんの今回の役とても良かったです。ストーリー的に、主役のストルーエンセよりも観客からの同情を誘いやすいというか肩入れしたくなるキャラクター。

宝塚あるある厳しすぎる帝王教育で歪んだ王。酒に溺れた酔っ払いから、真っ当になっていく様子の演じ分け大変だったと思います。ようやく王としての自信を持ち始めてきた頃に、ストルーエンセと王妃の関係に気付いてしまう。この時の子犬のような表情がとても良くて、可哀相だなぁと思わず胸にグッときました。

不倫に気付きながらもお芝居を観劇中はぴったり膝をつけて座っている姿は王なのに自信がなさげ、その点となりに座るストルーエンセは何度もクリスチャンに話しかけるようなそぶりで厚かましい。完全に舐められている事が表現されています。

余談ですが史実上ストルーエンセは10ヶ月の間に1069通もの政府令を発布しています。途中クリスチャン7世がサインしすぎて倒れこむ描写がありますが、そりゃ重度の腱鞘炎になって倒れる。この描写ちょっと面白かったです。その後もさりげなく腱鞘炎を引きずってるんですよね。

あがちんは結構早くから抜擢されていて、ザ男役のビジュアル、体型、そして明るく良いキャラしているのですごく好きなんですが、正直このまま上がり続けるならせめて歌かお芝居どちらかは上手くなってほしいなと思っていました。

それが今回の役で、お芝居良くなったなと思えました。これまでずっと感情も台詞も平ら、みたいな印象だったけど今回は特に不倫に気付いた後の演技が良かったです。

歌も1曲目は歌えてる!と思いました。

あがちんもまだ101期生、これからの伸びが楽しみです。

侍女エリザベート(華純 沙那 )

今回の個人的注目株です。うわ、めちゃくちゃ可愛いくて上手い子がいると思いました。王妃カロリーネの侍女で密かにストルーエンセに恋心を抱いています。

まず声の可愛さで「お!」と思い、顔もすごく可愛い。そしてお芝居も、宮廷メンバーと話している時と、ストルーエンセと話している時の声のトーンの演じ分けができていて上手いなと思いました。

朝美さんに頬をツンってされている姿も可愛かったしこの二人の並びも似合っていた。106期生。これからも出番が増えてほしい。

ランツァウ伯爵(真那春人)

安定のまなはる。安心感しかない。今の雪組になくてはならない存在。

今回は、始めの方は仲間かと思いきや後半怖かったですね。ストルーエンセの自業自得感もありますが。まなはるの存在がもはや好きです。舞台でもMCでもずっと安定していてこれからもずっといてほしいです。

ブラント(諏訪さき)

安定のすわっち。

すわっちの演技も凄く好きで、わりと下級生の頃からずっとオペラで見ています。

お芝居観劇の場面で、ストルーエンセの不倫に気付き、バチギレモードでずっと睨んでいる姿が印象的でした。それでも最後はストルーエンセを庇おうと出てきた様子がなんか「春雷」のロルフを思い出しました。まなはるがやっていた役です。やはりこの二人は雪組の芝居の要だと思う。

神学者 グルベア(叶ゆうり)

なんか一人作画タッチが違う人がいる!70年代くらいの少女漫画から出てきたような黒髪と濃い顔。かのゆりだ~!となりました。

かのゆりの演技もずっとオペラで見てると面白いんですよね。fffの時の選帝候の「変な音楽」と言われた後にワナワナなる姿が大好きで、劇場で見る時はずっとその場面は選帝候ばかり見ていました。歌も上手いしお芝居も器用で彼女もずっと雪組に居てほしい存在。

このグルベアの役も、悪役なんだろうけど舞踏会ではノッてしまうし露骨に酷い事しないし良いキャラでした。というかこの作品てヒール的な役はいるけど極悪非道みたいなキャラはいませんでしたね。

王太后ユリアーネ(愛すみれ)

あれ、愛すみれって副組長だっけ?と錯覚してしまった程の貫禄。朝美さんと同じ95期です。

パレードでも笑みを浮かべないスタイルで登場した王太后。息子を次期王にと企んでいるけれどお芝居の中ではグルベア同様露骨に嫌な事はしない。むしろテニスまでやっている。そして誰よりもカツラのカラーリングがドレスの色と合っていてお洒落さんでした。

早くから自立した女性や母親役ばかり見ている気がする愛すみれ。お芝居も歌も上手い。彼女もやはり雪組にはいなくてはならない存在です。

それぞれの課題

ざっと登場人物の感想を書きました。

少し課題があると感じるもののそれは微々たるもので、それに今回の出演者ほぼ100期3桁代なんですよね。まだ全然若い!

100期代の若くも注目株な面々と、90期代の雪組の脇を固める確かな実力者達で構成されたメンバーでめちゃくちゃ強いなと思いました。

この学年と人数でこれだけの舞台を作り上げる事が出来るのだからむしろ伸びしろしかない。

それは演者だけではなく、脚本にも言える事で、全体的に見たら凄く良かったし、間の取り方や構図も素敵な場面が多くて好きな作品でした。

ただやはり1幕の盛り上がりに対し、2幕では展開やキャラクターの変化が急すぎるように感じてしまいました。

劇中劇も少し間延びしてしまった感があってもう少しコンパクトになったら良かったなと思いました。ただあの場面はそれぞれ観劇中の面々の各お芝居に個性が出ていて面白いので、自分で観る人を選べる劇場で直接見たら、感想が変わるのかもしれないとも思いました。

1幕は終盤付近で国王も王妃も前向きで、これからの国の発展が楽しみだとワクワクした所でまさかのストルーエンセと王妃がキスしてしまい「キャーますます2幕どうなるの!」と休憩中すごく楽しみでした。

プロローグと同じ「国王」「王妃」「ストルーエンセ」の3人にスポットライトが当たって幕が閉まる演出も良かったです。

2幕、幕が上がってテニスから始まる場面が「1789」を思い出したし急に健康になった王宮がシュールで面白かったです。

一部ではテニミュの完全再現と呼ばれる場面で、確認したらテニスのボールを打つ音まで一緒で笑いました。シュールで良い。

王妃との忍び愛もいつバレるんだろうとドキドキしてクリスチャンには悪いけどキュンとする場面もあり、でも劇団員の劇中劇あたりからちょっとダレ始めた印象。

ストルーエンセの闇落ちも結構急に感じる部分もありましたが、ひかりふる路などを観ているのでそこは脳内補完できました。ただ改心も早かったかな。

ブチ切れだったブラントも「やっぱりあの日見た景色が忘れられねえ」という理由で死罪確定なのに助けに来てくれて「急にどうした」感がありました。

そして1幕の伏線回収とばかりに決闘を申し込むストルーエンセ。あ、これは死んだなと思いました。なぜなら宝塚の作品において決闘になると大概主人公が死ぬので。決闘が中止になったとしてもなんやかんやで死ぬパターンもあるので。

本当に今までなんだったんだってぐらいあっさり死にます。ストルーエンセもまたあっさり負けて死にました。またも脳裏に浮かぶ望海風斗さん…

史実で処刑になるストルーエンセをこの決闘で死なせたのはそういったパロディ的な遊び心もあるのかなと思いました。それを、王が直接手を下したのが公になるとマズいので表向きには処刑した事にして今の史実に繋がるという歴史の書き換えが面白かったです。

冒頭でも書きましたが、これまでの宝塚の作品を散りばめているような演出がとても面白かったし世界観に入り込みやすかったです。この作品かな、この場面かなと思い浮かんできた時は楽しい。それにやはり朝美さんや雪組に関係する役や作品が多めなのも良かったです。

色々書きましたが、今回の作・演出の指田先生は今回でまだわずか3作品目、2014年入団です。すごい、100期生と同じ。

それでこれだけの作品の仕上がりは凄すぎると思います。後半の詰め込んだ感もぶっちゃけ本公演での他の先生の作品でも感じる事あるし、まだ3作目でこれなら今後どのような作品が出来上がっていくのか、舞台の大きさや出演者が増える本公演作品はどれだけスケールが大きくて美しいものになるのかと楽しみしかありません!

以上、現代技術の賜物オンライン配信(オンライン診療)を受けての感想でした。

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